診療科・部門

内視鏡センター

内視鏡センターの特色

当院では、内視鏡検査・治療を担当する内科医・外科医、看護師、補助員をメンバーとして内視鏡センターを構成し、内科・外科の垣根を取り払い情報を共有し検討することにより、内視鏡関連疾患の診断・治療を迅速かつ的確に進めていくようにしています。「患者さんや地域の先生方のニーズと信頼に応えられるよう、常に努力し、常に進化し続ける内視鏡センター」という目標に向かって、鋭意努力してまいります。

内視鏡検査表

●内科担当 ○外科担当

AMPMAMPMAMPMAMPMAMPM
上部消化管内視鏡要確認
上部ポリペク・EMR   
上部ESD
上部EUS
大腸内視鏡要確認
大腸ポリペク・EMR  
大腸ESD 
大腸EUS 
ERCP関連 
EVL
EIS
PEG
EUS下穿刺
小腸内視鏡

内視鏡センター担当業務

  • センター長(内科部長) 安永 祐一

近年の内視鏡機器や処置具の開発と内視鏡検査・治療手技の進歩は目覚ましく、当院の内視鏡センターにおいても、最新鋭の電子内視鏡ビデオスコープシステム・周辺治療器具を駆使して年間6,500例以上の消化管内視鏡検査および治療を行っています。経鼻内視鏡を用いてより苦痛の少ない検査を、特殊光観察機能(NBI)を備えたハイビジョン電子内視鏡を用いてより精度の高い検査を行い病変の早期発見に努めています。また各疾患に対してより侵襲の低い安全な内視鏡治療が提供できるよう心がけています。

(1)通常内視鏡検査

ⅰ.上部消化管内視鏡検査

年間約4,000例の上部消化管内視鏡検査を施行しています。従来の経口内視鏡に加え、2008年度4月からは経鼻内視鏡を導入しより苦痛の少ない検査を提供できるようになりました。経鼻内視鏡ではスコープが舌根に触れることなく消化器に到達するため吐き気をほとんど感じず、鼻腔内には麻酔剤が塗布されるので痛みもほとんどありません。また患者は医師と会話することができるため、モニターを見ながら医師に質問できるなど安心して検査を受けいただけます。

ⅱ.下部消化管内視鏡検査

年間約2,350例の下部消化管内視鏡検査を施行しています。当院では早くから磁界を利用し内視鏡の挿入形状を3次元表示できる内視鏡挿入形状観測装置を導入し、術者の挿入をサポートするとともに従来のX線撮影での挿入形状確認と比較して被曝が無いため、患者にとってより安全な検査を提供しております。

(2)特殊内視鏡検査

ⅰ.拡大内視鏡・狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)

拡大内視鏡による腫瘍性病変の腺口構造(pit pattern)の観察は、病変の組織型・深達度診断に有用です。 NBIとは、光の生体組織への深達度を考慮して観察光の分光特性を調節させることで消化管粘膜の表面微細構造および浅層の微細血管構造を描出技術で、早期がんの診断に威力を発揮します。

ⅱ.超音波内視鏡検査(EUS:Endoscopic Ultrasoundscopy)

超音波内視鏡検査は、生体内において病変の垂直断面像を直接描出する検査法です。超音波内視鏡検査は内視鏡先端に直接プローブが納められた超音波内視鏡専用機と通常の内視鏡の鉗子孔よりプローブを挿入する細径超音波プローブで検査を行います。がんの深達度やリンパ節転移、粘膜下腫瘍や壁外圧排の診断が可能です。内視鏡治療の適応があるかの判断をするうえで重要な情報を得る事ができます。

ⅲ.内視鏡的逆行性胆管膵管造影 (ERCP:Endoscopic retrograde cholangiopancreatography)

内視鏡的逆行性胆管膵管造影は胆膵系疾患を調べる精密検査で、内視鏡を用いて膵液の流れる膵管と胆汁の流れる胆道の様子をレントゲンで調べます。また直接的に組織や膵液・胆汁を採取し、組織学的診断やがん遺伝子診断に役立てます。

(3)内視鏡治療

ⅰ.消化管の内視鏡治療

1.食道・胃静脈瘤の内視鏡治療
肝臓への門脈の流入において、肝臓の肝硬変への変化により門脈圧が亢進することで逆流し側副血行路が形成され一部が食道・胃静脈瘤となります。形態が大きくなり、色調が白から青色になり発赤所見が出現すると破裂の危険は高くなります。当院では緊急例では主にEVLを、待機・予防例では症例に応じてEVLとEISを施行しています。

(a)内視鏡的静脈瘤結紮術(EVL:Endoscopic variceal ligation)
 ゴムバンド(O-リング)を用い、静脈瘤を機械的に結紮することにより壊死脱落させ、血栓性閉塞を起こさせます。
(b)内視鏡的硬化療法(EIS:Endoscopic injection sclerotherapy)
 内視鏡を使って穿刺針にて硬化剤を静脈瘤に注入する治療法です。

2.消化管出血の止血術
当院では上部消化管出血を疑う場合は、緊急内視鏡検査を行っています。早期に出血源を明らかにし、止血術を行うか否かの判断をくだし、下記に示す中から適切な止血術を選択し施行しています。

(a)クリップ法
 金属製のクリップを用いて物理的に圧迫止血する方法。
(b)高張ナトリウム・エピネフリンあるいは高張ブドウ糖・エピネフリン局注法
 エピネフリンによる血管収縮作用と高張液による組織の膨化、血管壁のフィブリノイド変性、血栓形成で止血する方法。
(c)高周波止血鉗子による凝固止血法
 止血鉗子のカップで出血部位を把持したり、押し当てて凝固止血する方法。
(d)アルゴンプラズマ凝固(APC)法
 イオン化され電気伝導性をもつアルゴンガスに高周波電流を流し組織を凝固する方法。

3.胃腺腫・早期胃がんの内視鏡的切除術
胃腺腫や内視鏡切除の適応のある早期胃がん病変に対して、病変の大きさや部位・患者の状態で、従来の内視鏡的粘膜切除術(EMR)と2006年4月保険収載され広く普及している内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を選択し施行しています。

(a) 内視鏡的粘膜切除術(EMR:Endoscopic mucosal resection)
 粘膜下層に液体を注入し膨隆させた病変をスネアリングして高周波電流で切除する方法。
(b)内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD:Endoscopic submucosal dissection)
 従来のEMRに比べ大きく正確な一括切除が可能となり、外科的切除に匹敵する根治性を得ています。

4.内視鏡的大腸腫瘍切除術
がん化の可能性の高い腺腫と転移のない早期がんが内視鏡治療の適応で、当院では原則1泊2日もしくは2泊3日の入院治療を行っています。 サイズが大きいことなどで従来のEMRでは一括切除が困難な腫瘍については、2011年2月から、大腸の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)も行っております。(2012年4月1日より保険収載されました)

5.経皮内視鏡的胃ろう造設術 (PEG:Percutaneous endoscopic gastrostomy)
脳血管障害など何らかの原因で経口摂取が困難になった場合、経腸栄養法と静脈栄養法の二つがありますが、高カロリー輸液や経鼻胃管による栄養補給には種々の問題点があります。PEGとは、内視鏡を用いて胃に栄養を送るための小さな穴をおなかにつくる手術のことで、できた穴から栄養を摂取することができます。再び口から食事ができるようになるまで十分な栄養を補給できるので、多くの患者さんが体力を落とすことなく、高い生活の質を維持しながら生活できるようになりました。

6.消化管狭窄に対する拡張術
良性疾患による狭窄ではバルーン拡張を施行しますが、食道、胃・十二指腸、大腸などのがん性狭窄に対してはステント挿入を施行しています。

ⅱ.胆膵系の内視鏡治療

1.総胆管結石の除去
総胆管結石で胆管炎が引き起こされると、比較的短時間で悪化し急性閉塞性化膿性胆管炎になり生命の危険が生じるため石を取り出す必要があります。内視鏡的乳頭切開術(EST:Endoscopic sphinctecterotomy)や乳頭バルーン拡張術(EPBD:Endoscopic papillary balloon dilatation)で乳頭の開口を広げ石を取り出せるようにします。

2.胆管狭窄・膵管狭窄に対するドレナージおよびステント留置
何らかの原因で胆管・膵管に狭窄や閉塞が生じ、胆汁や膵液の流れが滞ってしまう場合に内視鏡を用いてステントと呼ばれるチューブ(チューブステント・メタリックステント)を挿入しその閉塞を解除し、胆汁や膵液が流れるようにします。

検査実績

実績(2022年度)

上部消化管内視鏡検査2,824件
下部消化管内視鏡検査1,674件
内視鏡的逆行性胆道・膵管造影検査(ERCP)234件
上部消化管内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)39件
下部消化管内視鏡的粘膜切除術(EMR)355件
下部消化管内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)20件
内視鏡的胆道・膵管ステント留置術69件
内視鏡的胆道・膵管結石除去術または砕石術65件
超音波内視鏡(EUS)検査・治療97件