オゾン層の破壊が指摘されて以来、大型連休を迎える頃には、誰もが紫外線を強烈に意識するようになります。紫外線は私達を病原性微生物の繁殖から守ってくれてきたわけですが、一方では日焼けや皮膚がんの原因にもなります。
汗ばむような季節になると、そろそろ病原性大腸菌などによる食中毒や感染性胃腸炎が話題になります。生物は進化の過程で、複雑な免疫機構を作り上げてきましたが、最も進化したはずのヒトでさえ、未だに感染症の脅威に曝されています。
ところが、抗体などを作れない、未熟な免疫機構しか持たない昆虫などは、病原性微生物からどのようにして身を守っているのでしょうか。彼らは抗菌ペプチド(たんぱく質)を作って、その働きで細菌の細胞膜を破壊することで感染から逃れています。
さて、ヒトではどうでしょうか。もちろん人体でも、昆虫とは種類が異なりますが、数種類の強力な抗菌ペプチドが作られています。たとえば、腸管ではディフェンシンという抗菌ペプチドを産生して、腸内細菌が体内に入るのを阻止しています。最近では自然界に存在する抗菌ペプチドを食中毒の予防に使う試みがなされています。このような抗菌ペプチドは、一旦ヒトの口に入れば、消化管から分泌される消化酵素で分解されるので、副作用の心配がないというわけです。
面白いことには、脂肪細胞が抗菌ペプチドを分泌することが見出されています。皮膚に化膿菌が感染すると、皮下に脂肪細胞が増殖して、その際にカテリシジンという抗菌ペプチドが作られ、分泌されるということです。
脂肪組織にこのような抗菌作用があるとは驚きですが、実際、昔から腹腔内は抗菌性が比較的高いと言われていますし、ここに炎症があると、腸間膜にある脂肪組織がその周囲を包みこむことが観察されています。生活習慣病の予防という観点からすると、ともすれば悪玉と目されている内臓脂肪にも、生体を防御する新しい機能があるのかもしれません。
四季雑感【過去のページ】
- ●2016.8.9 真夏に咲く花といえば、早朝のやわらかな光に映える深紅の花をつけた百日紅を想い起します。
- ●2016.5.1 新緑が目にしみます。緑の濃淡、彩度の微妙な違い、それらの配合の妙など見飽きることがありません。
- ●2016.2.15 「それは寒さが身に応えますよ。」当院でおもに屋外で仕事をしていただいている方に、「寒さと暑さとでは、どちらが辛いですか?」とお聞きした時、このような答えが返ってきました。
- ●2016.1.15 秋の夕暮れのひんやりとした冷気は、どこか澄んでいて、一日の活動が終わりを告げようとする時刻にふさわしく感じられます。
- ●2015.6.22 夏のトワイライトは、木洩れ日が揺れる林間であれ、ビルの谷間であれ、さわやかな高揚感を与えてくれるときがあります。
- ●2015.5.18 オゾン層の破壊が指摘されて以来、大型連休を迎える頃には、誰もが紫外線を強烈に意識するようになります。
- ●2015.1.26 大寒も過ぎ、寒さが身に染みる季節になっています。つい出不精になって家に閉じこもりがちの方も多いかもしれません。
- ●2014.11.5 いよいよ食欲の秋になりました。若い頃のように手当たり次第に秋の味覚を満喫するということはなくなりましたが、
- ●2014.8.7 焼けつくようなアスファルトの道を歩くときに感じた、あの湧き上がるような生命感はどこへ消えたのかと思うときがあります。
- ●2014.5.12 梅雨に煙る新緑には、心が洗われるような格別の趣があります。
- ●2014.2.7 新しい年が明けて、大変に寒くなっていますが、気分的には世の中が少し明るくなっているように感じられます。
- ●2013.11.8 気候温暖化の影響で四季がはっきりしなくなっているといわれています。
- ●2013.6.29 紫陽花(あじさい)の花が咲いています。三十年近く前のことですが、
- ●2013.4.19 過日、晴天に誘われて、桜が満開となり多くの花見客で賑わう夙川周辺を散策しました。
- ●2012.12.25 街のイルミネーションが寒気の中でひときわ華やいで見えます。
- ●2012.7.24 蝉時雨のなか、病院の近くにある海清寺の横を通る機会があった。
- ●2012.5.7 新緑の季節になりました。風にそよぐ若葉が眩しく感じられます。